旅は道連れ視野狭し
はてさてご無沙汰でございます.
一時はマスクを付けずは人間にあらず、とまでの世界が生み出されていましたがいかがお過ごしでしょうか.
自粛とはなんぞや美味なるものか、と言わんがごとく動き回る皆々様のお元気さに目を細めつつ今回も駄文を投げる構えを見せてまいります.
といっても大体のことは同行者が22世紀の文体で記録しているので目新しいものなどありません.そちらは末尾でご紹介します.
21世紀の視点からご覧になりたい方はどうぞお付き合いを.
近鉄特急「ひのとり」
出かけなければ体が腐る.しかし出かければ身の破滅.喉元過ぎればなんとやら.
そんな難しい時期も過ぎGoToキャンペーンなるものまで世に放たれる昨今.
それはさておき世の中には「株主優待券」なるものが存在します.
その名の通り株券を抱えるやんごとなき資本家の皆様のために存在するのですが、なぜか市中に出回っているのです.
本来はその効力ゆえにそれなりのイイお値段で店のショーケースに燦然と輝くのですが、このご時世では手の届く値段で積み上げられています.
それを手が滑って4枚手に入れたのであわよくば誰か買い上げてくれんものか、と思いながらTwitterを眺めると…いました.買ってくれそうな”インターネット・女子大生”(固有名詞)が.
さっそくコンタクトを取ると快諾.いつ引き渡すのかとやり取りをすると予定が合わない.ならば付いて来ればええやんということでお供にしました.
翌朝.
オタクの朝はやや早い.世が世なら18mの金属製の動く箱にすし詰めにされている時間ですがややゆとりある空間が提供されています.いつもこうであれ.
その後地下に潜伏しまた箱に閉じ込められやってきたのは大阪難波.
ホームに降り立った我々が目撃したのは高級感漂うクソデカハンディ掃除機…
ではなく近鉄が誇る特急ひのとり.
緋色に輝く車体を眺めるのもそこそこに車内へ.
実はレギュラー座席は利用したことがあります.よきでした.
今回はプレミアム座席を予約したので気分はそれ以上に上がる.
デッキから小上がりの先、目に飛び込むのはベージュ系の座席と緋色のカーペット.
「これがプレミアムですよ」と視覚からわからせてくる.美しい.
そしてまだおろしたての革のようなにおいがする車内を進み着席.これはなんだといいながら電動リクライニングを動かす.
快適.それ以外の言葉はもはや不要.
鶴橋を出ておもむろにカフェスポットでコーヒーを買う.
真夏に涼しい車内でホットコーヒーを飲む、冬のこたつでアイスと同じなんだろうか.
こうして「完成」された環境で過ごしながら移動できるとは...
ケチ臭い小物なので何かとコストパフォーマンスの概念を振り回しがちですが、この場においては忘れ去りました.
コスパとかそういう問題ではない.いい体験をしている.
コンセントに挿すプラグを持ち込み忘れた.
というわけで終点名古屋へ.ホームに降り立って現実に引き戻される.あつい.
あの快適な空間は夢か幻だったのかと思うような蒸し暑さのなか、我々は名古屋の街に踏み出したのでした.
向かったのはリニア鉄道館.
館内を一回り後在来線シミュレーターに翻弄されつつキャッキャしていました.
「達人編は練習してから」2020年になっても人類は説明書きを読まない.
ひのとりで満たされた我々は展示物のN700系普通席に腰掛け、「東海道新幹線は椅子が285km/hが滑っているだけに過ぎない」という結論に至りました.
なお横の700系グリーン席ですぐに撤回.オタクは手のひら返しが早い.
1階で展示物とされていた座席が2階では通路に「これは備品ですよ」と言わんばかりに置かれている魔訶不思議な場所、リニア鉄道館.本題はそれではなく.
何を隠そう700系の土手っ腹に”AMBITIOUS JAPAN!”とレタリングされた姿を一目見ようと遠路はるばるやってきたのです.
幼少期一目見たいと願ったその姿.
20世紀末に生まれ21世紀に風と空間を切り裂き煌めいた彗星.
いざ眺めると「うーん、まあこんなもんか」と思ってしまう.
700系と言えば濃淡グレーにイエローを纏うE編成のレールスターと感じて育ったせいか.それとも静かに博物館で佇む姿に違和感を覚えてしまったのか.
「突き進めばのぞみは叶う」その言葉通り時代と技術が先へ進む故とはいえ寂しいものです.
ここまでを読み返せばオタク・ポエムで我ながら寒気がしますがこれ以上爽やかになりそうにもないのであきらめてこのままにしておきます.
あとは味噌カツを頬張り真夏の屋外で天日干しになりながらカメラを構えと諸々の用事も済ませ帰路へ.
名古屋駅の地下はややこしい.近鉄名鉄JRに地下鉄が入り組んでどこにいるのかわからなくなること幾度か.位置関係に理解のある同行者の導きでなんとか改札へたどり着く.
帰りも同じくひのとりで.
夕飯を済ませあまりにも心地がいいので途中で眠っていました.
目が覚めれば鶴橋の手前.目覚ましにコーヒーを一杯.
名残惜しいが都合で鶴橋で乗り換え.同行者に別れを告げて家路につきました.
振り返れば大変よい時間でした.
まだ博物館で眺めるには早いと感じてしまうかつての憧れの存在に寂しさを感じたり.
しかし寂しくとも「のぞみはいつも、そこにある」のです.
今回の旅は寂しさに浸って終わったわけではありません.
挽きたてのコーヒーを飲みつつ柔らかな椅子に腰かけくつろぐ.
字面では淡泊ですがいざ体験するといい気分.
まだまだ世の中には知らない楽しみがあるなぁと文明開化の顔をしています.
道中同行者を振り回してしまった節があるのでここでお詫びとします.
最後に一連の流れを22世紀視点で綴った同行者のブログを紹介して締めます.
それではまた.